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本書は一昨年東京で開催された第5回国際脳神経外科学会に関連して,京都で半田肇教授司会のもとに開かれたMicroneurosurgeryの国際シンポジウムのプロシーディングである。時恰もマイクロサージェリーが急速に広がりつつあつた矢先ではあり,世界の第一人者が集まつて経験と新機軸を話し合うことには計り知れない意義があつた。京都シンポジウムでこの問題を取り上げ,大きな成果を収められた半田教授の見識と手腕に深甚の敬意を表するゆえんである。筆者もまた東京の帰路,このシンポジウムに出席することができた。その後,引き続き福岡でのシンポジウムを控えており,急き立てられる思いをしながら,出席したのであるがやはりそれだけのことはあつた。本来プロシーディングの価値は,シンポジウムそのものの良否が第一義的なものであるが,それをいかに再現し,記録として残すかも重要な仕事である。シンポジウムは,機器,脳動脈瘤・動静脈奇形,脳動脈血栓症,末稍および脳神経,脊髄障害,トルコ鞍および周辺部腫瘍の6主題について,2日間にわたり,それぞれ第一人者によつて,多彩な講演,討論が繰り拡げられたのであるが,本書には残念ながらそのすべてが網羅されているわけではない。しかしながら,各主題についての重要な講演は鮮明な図譜と参考文献を付したフルテキストとして見事に再現されており,たどたどしい理解力で肝腎なポイントを聞き洩らしながらその場に居合わせたのよりもはるかに有益である。microneuro—surgeryはすでにわが国でも日常の脳神経外科手術手技として広く定着しており,それなりに多くの脳神経外科医が実際に直面してどのように処理すべきか迷うことも少なくない。本書は前に述べたように,器械・設備の問題から,腫瘍,血管障害,脳,脊髄,末稍神経というふうに,現在microneurosurgeryの行なわれるすべての領域,疾患について,現在の第一人者達が答えてくれているものであり,ある部分についての専門書というよりもむしろmicro—neurosurgeryの教科書的性格のものである。専門家には勿論のこと,これから学び始める人にも広くかつ繰返し繙かれるであろうことを疑わない。
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