Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
河上徹太郎の『風邪熱談義』―熱を出すことの意味
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.970
発行日 2013年10月10日
Published Date 2013/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110279
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昭和44年に発表された河上徹太郎の『風邪熱談義』(『有愁日記』所収,新潮社)には,風邪で熱を出して寝込むことが甘美で肯定的な体験として描かれている.
子どもの頃虚弱だったという河上は,床の中で過ごした冬の思い出を次のように語る.「熱に浮かされてウツラウツラと眠りに誘いこまれ,フト眼を覚ますと障子に当っていた陽の光がすっかり薄れて,街からは豆腐屋のラッパが聞え,台所では母がコトコトと何か俎の上で刻んでいる.子供は聞きながら,ああ,今日も終ったと,甘い夢心地である」.
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