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はじめに
筋強直性ジストロフィー(myotonic dystrophy;DM)は常染色体優性遺伝病で,その発症時期から先天性筋強直性ジストロフィー(congenital myotonic dystrophy;CDM),小児期発症型,成人発症型筋強直性ジストロフィー(adult type myotonic dystrophy;ADM)に分類される1).有病率は10万人に約5.5人であり2),臨床症状としてはミオトニア,進行性の筋萎縮と筋力低下を主症状としとしている1).この筋力低下は,筋線維の異常の程度と相関すると報告されている3).筋組織所見としては,初期から筋線維の大小不同が観察される.核の変化は特徴的で,ごく初期から核の数が増加し,高頻度に内在核を認める.筋線維タイプは多くの例でタイプⅠ線維の萎縮とタイプⅡ線維の肥大が観察され,筋線維の数はタイプⅠ線維が優位となる3).
一方,DMの発症原因は,19番染色体長腕部(19q13.3)に存在するmyotonin protein kinase(MT-PK)遺伝子の非翻訳領域中の3塩基配列(CTG)の繰り返しの数(CTGリピート数)が,異常増大することによる4-6).CTGリピート数は,正常では5~37回である5)のに対し,DM患者では50回以上,特にCDMでは2,000回以上にまで達すると報告されている6).このCTGリピート数はDMにおける運動機能や筋力を含んだ臨床症状の重症度と相関関係にあるとされている7-11).なかでも,CDMは最も重度な臨床症状を示し,生下時より筋緊張の低下や呼吸器障害を呈し,精神運動発達の遅延がみられ,ADMとは異なった重度な臨床症状を示す12).
ADMにおける筋組織所見,遺伝子異常およびCTGリピート数と臨床症状の重症度の関係について言及した報告は数多いが,CDMにおける筋組織所見と遺伝的要因および,臨床症状の重症度を比較検討した報告は少ない.リハビリテーション分野および理学療法分野において,対象者の筋力を全般的に管理,評価し,Activities of Daily Living(ADL)の改善および,Quality of Life(QOL)の向上を図ることは重要である.特に,CDMのように生命予後が良好で,患者個々人の重症度および進行度が多様な遺伝性神経筋疾患の場合には,個々の患者に対応するリハビリテーションが重要となると考えられる.近年,DM患者個々人のCTGリピート数と臨床症状の関係やそれらに対する理学療法(リハビリテーション)の評価や治療方法のあり方が重要視されている13).また,ポストゲノム時代に,遺伝情報をリハビリテーション分野に応用し,オーダーメード医療を想定したリハビリテーションを展開することも重要であると思われる.
これらの経緯から,本研究ではCDM患者における遺伝情報のリハビリテーション分野への応用を目的として,CTGリピート数と筋組織所見の特徴を比較,検討することを研究課題とした.
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