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診療のポイント
第一線の医療における患者の発見 本症は一般にあまりにも稀な疾患と思われすぎていることと,患者自身が病識に乏しく(症状の一つ)本質的な症状を訴えないことなどにより,第一線の外来診療で見逃されたり誤診されたりする場合が少なくない.また原疾患が診断されないままに個別症状のみが診療の対象となっていることもあり,白内障(眼科)・異常性格(精神科)・不妊症(婦人科)・糖尿病(内科)などがその例である.本症発見の発端は偶然の機会(感冒・腹痛など直接原疾患と関係ない日常の受診など)に医師が気付く場合がむしろ多い.本症の生命に関する予後は比較的良好で50歳以上の生存が普通であるから,早期発見による治療および管理(care)の方針の早期計画は重要な意味をもつ.
典型例の診断は,いわゆる"Blickdiagnose"の形で糸口が得られる.背をまるめて首を前屈,不安定な歩行,顔の筋肉にしまりがなく,男性では前頭部が禿げ上り,女性では額の生えぎわの毛が薄く,鼻にかかった不明瞭な声で早口に喋り,自己主張的に頑固であるが病識がない.このような状況下で本症を強く疑い問診すると視力が弱いか白内障といわれたことがあることが多く,診察により筋萎縮と筋力の低下(顔面・頸部・前腕・下腿など)および筋強直症状(握った手が急に開けない,またハンマーで拇指球を叩くと拇指が伸展背屈して他指に寄り添うようなゆるい運動をみる)があり,また男性では睾丸が小さく軟かく,男女とも結婚している場合には配偶者が健康であっても子供ができないか死産・流産となることが多い.家族歴では両親のどちらかに白内障が,また同世代(同胞・いとこなど)に同症らしい患者の居ることがわかることがある.以上述べたような根拠があれば一応の診断としてはまず本症は確実である.したがって次項に述べるような病態について精査し,個々の程度に応じて医師のレベルで治療すると同時にリハビリテーションの計画を立て,家族を含め,必要あれば福祉行政のルートに乗せる行動を開始する.その際,事情により初診した医療機関で続行するか,一時的または持続的に他の専門医・専門施設のある医療機関に紹介するかを判断し,わかり易く患者・家族に説明し,治療と管理に対する意欲を喚起する.
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