とびら
環境を観る目を養う
北出 貴則
1
1誠佑記念病院リハビリテーション室
pp.93
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106190
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私が理学療法士になったのは,母親の影響が大きい.母親は戦前生まれの肢体障害者(下肢障害)である.そのため,母親の友人,知人には障害者が多い.先天性の障害,切断者,心身障害者,戦傷者などで,杖歩行可能から車いす生活者,ベッド生活者もいた.私は幼少時より母親の友人たちに囲まれて育ったため,障害者を障害者として意識することはなかった.思春期では,多感なためか,障害者を避けようとしていた時期もあったが,結局,理学療法士となって20数年間,仕事で向き合っているのは障害者や病人である.
私は,理学療法士という職業に就いてよかったと思うことがある.それは,“環境を観る目”を養えたことである.私の目が姿勢・動作分析に長けているとか,他の理学療法士より勝っているというわけではない.“環境を観る目”とは,物的な構造や空間など,物理的環境が人の活動にどう影響しているのかを観察する視点である.私の母親や障害者の友人は,杖や車いすで生活し,また住宅も生活しやすい環境整備が行われており,そのような環境で育ってきた私は,“環境を観る目”が自然と身についたのかもしれない.
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