映画
「乳房よ永遠なれ」を観て
木下 正一
pp.38-39
発行日 1956年1月1日
Published Date 1956/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200985
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近来わたくしたち産婦人科医の外来には,乳房のことで相談をしにくる婦人が非常に多くなつたように思う.若い婦人は,「私のオツパイ,もう少しふくよかに大きく出来ないものでしようか」と云つて相談にくる.中年過の婦人は,「私の乳の中に,何かしこりがある,押してみると痛い,これは乳癌ではありませんか」と憂い顔でたづねてくる.乳房への女性の関心は近時特に強くなつたように察せられる.
映画「乳房よ永遠なれ」は正にこれをねらつた作品であろう——何の準備もなしに,私はこれを見に行つた.ところが,どうも期待を裏切られてしまつた.それは1口に言うならば,この映画は,私が1番大きな期待をよせていたポイント——乳癌手術の前後の場面——に対して,ちつとも私の期待に応えてくれなかつたからである.つまり,私としてはこの場面に強く焦点を絞つて,迫力のみちた描写を見せてほしかつたのである.以下,もう少し詳しく話の筋を語りながら,その点について述べてみよう.
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