特集 ファシリテーションは今
ファシリテーションの神経生理学的基礎
森 茂美
1
Mori Shigemi
1
1岡崎国立共同研究機構・生理学研究所
pp.553-561
発行日 2002年8月15日
Published Date 2002/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551106089
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はじめに
ヒトや動物の身体は頭部・体幹そして左右の上肢・下肢など数多くの運動分節(motor segment)でつながれている.代表的な運動分節である手足の動きは分節運動(segmental movement),そしてその姿勢は分節姿勢(segmental posture)と呼ばれる.中枢神経系(central nervous system)は手足がスムーズに動くように,伸筋そして屈筋の背景活動(background excitability)を調節して分節姿勢を,またそれらの一部を選択的に活動させて分節運動を作り出している.手足の伸筋や屈筋にみられる背景活動は筋トーヌスとしてとらえると理解しやすい.部分運動分節にみられる筋トーヌスに対して,全体姿勢の筋トーヌスを姿勢筋トーヌス(postural muscle tone)とも呼ぶ1).中枢神経系の障害に際しては,しばしば運動分節に筋トーヌスの異常が発現する.そしてその結果,全体姿勢(total posture)が乱れて異常な姿勢反射(postural reflex)が発現し,随意的に運動を実行したり制御することが難しくなる2).本章では,第1に生命活動を制御する脳幹の基本的機能を,第2に脳幹網様体に対する感覚信号の投射様式,そして第3に筋トーヌスの制御と歩行運動の制御にかかわる神経機序を解説し,第4に脳幹の機能を維持するという観点からファシリテーションの神経生理学的基礎を考察する.
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