特集 脳科学の進歩と理学療法
中枢神経系の階層性と運動
森 茂美
1
Mori Shigemi
1
1岡崎国立共同研究機構・生理学研究所
pp.621-630
発行日 1999年9月15日
Published Date 1999/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105385
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1.はじめに
運動制御motor controlの観点からみると,我々の身体は数多くの関節をつなぐ約800の骨格筋で作られている.肘関節elbow jointを例にとると,その動きは位置positionと速度velocityで決まるが,機械的には約100の自由度degrees of freedomをもち,空間内では少なくとも200の大きさdimensionをもっている.身体bodyがこれだけ多くの自由度をもつ関節でつながる集合体であると考えると,前腕・上腕・下腿・上腿などのいわゆる運動分節motor segmentsの動きをそれぞれに関連づけながら機能的につなぎ合わせること(coordination)が運動の遂行に際して必要となる.
その場合に中枢神経系はどのような仕組みで数多くの骨格筋活動を制御しているのだろうか?この疑問に答えるため階層性制御hierarchical controlという概念がJackson(1884)によって最初に提出され1),その後この概念はBernstein(1967)によって更に発展した2).本稿では偉大な先覚者であるJackson博士(1835-1911)とBernstein博士(1896-1966)の階層性制御にかかわる基本的な考え方を紹介し,その一方では最近明らかにされている重要な研究成果を紹介する.
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