特集 精神疾患をもつ患者の理学療法
精神疾患をもつ脳卒中片麻痺患者の理学療法
坂本 周介
1
Sakamoto Syuusuke
1
1医療法人桜珠会可也病院リハビリテーション科
pp.383-388
発行日 2000年6月15日
Published Date 2000/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105559
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1.はじめに
精神疾患に対する狭義の意味での理学療法,運動療法は,現在のところ確立されたものはない.我々が精神科病棟で理学療法を行う場合は,主として身体的問題に関してであり,その対象には,内部障害,予防医学としての健康増進などが含まれる.広義の意味では,運動の効果として精神安定,攻撃性の発散,達成感の獲得など精神・心理的な面も含まれるが,精神科においてこのような効果を期待して運動を処方する場合は,理学療法というより運動という活動(activity)を利用した行動療法や精神療法の範疇に含まれるのではないかと考えられる.
理学療法士が精神面の効果を目的として運動処方に関わる場合は,精神・心理的状態を評価して個々の患者の状態に合わせて理学療法プログラムを立てる必要がある.一般に精神科病棟における理学療法士の業務は,精神疾患の合併症として身体障害が起こった場合の一次,二次障害の治療,廃用による二次障害の予防,あるいは長期入院による体力低下防止を目的とした健康増進など身体的アプローチが中心となる.
近年,精神科でも入院患者の高齢化が進み,特に長期入院を余儀なくされる慢性精神分裂病(以下,分裂病)患者等では,元来の精神疾患のほかに,内科疾患や加齢に伴う変形性関節症,病棟内での転倒による骨折など整形疾患の合併が多くみられるようになってきている.
そこで本稿では,精神疾患としては最も一般的であるが,多様な精神症状が出現する分裂病を中心に論を進め,そうした症状に対する理学療法としての対応,リスク等について,筆者の経験を踏まえて述べることにする.
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