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特集 脳卒中
脳卒中片麻痺上肢に対する理学療法
Stroke: Physical Therapy for Hemiplegic Upper Extremity in Stroke Patients
松田 淳子
1
Junko MATSUDA
1
1協和会病院理学療法科
1Department of Physical Therapy, Kyowakai Hospital.
pp.8-13
発行日 1992年1月15日
Published Date 1992/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103423
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Ⅰ.初めに
上肢はその役割のほとんどが手の使用を含んだ複雑なものであり,運動麻痺だけでなく感覚障害も有することの多い片麻痺患者にとって,よほど軽症の患者でない限り病前と同じ機能,能力を再獲得することは困難である.このことは,随意運動が不十分でも,装具などの補助で支持ができれば“歩行”という大きな運動機能に結び付く下肢との大きな相違点である.それだけに目的が明確になっていないと,患側の上肢は容易に“使えない”,“忘れられた”身体の一部分に過ぎなくなってしまう.単なる付属物になってしまった上肢は重く,邪魔になり,そのくせ動作のときには忘れられるため疼痛などの問題も引き起こしやすい.
ヒトの日常生活は本来非常に多様なものであり,上肢の役割もさまざまである.100%の役割が果たせなくても,例えば衣服の着脱時に少し動かすことができることで,患側上肢は役割を果たし“邪魔になる身体の一部分”ではなくなる.
ところで,上肢において特に自由な随意運動を遂行しようとする場合,その動きを保証するために姿勢の調整は重要な要素になる.上肢を動かそうとする場合にも,ダイナミックな体幹の固定能力は重要であり,取りも直さずその固定能力は体幹,骨盤帯の機能に影響を受ける.
私たちは最近,片麻痺患者の肩関節可動域に影響を及ぼす因子について調査を行なっている.上肢,とりわけ肩関節の動きと体幹との関係を知りたいためである.
ここでは,まず調査結果を報告し,体幹と肩関節の関係を考察した上で,片麻痺上肢の理学療法について考える.
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