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特集 細胞の社会学─細胞間で繰り広げられる協調と競争
Ⅲ.がんにおける細胞の協調と競争
がん細胞社会のなかの多様性・多層性
Genetic and developmental heterogeneity in tumor society
西本 裕希
1
,
髙橋 智聡
1
Nishimoto Yuuki
1
,
Takahashi Chiaki
1
1金沢大学がん進展制御研究所
キーワード:
細胞競合
,
腫瘍内不均一性
,
がん幹細胞仮説
,
RB
Keyword:
細胞競合
,
腫瘍内不均一性
,
がん幹細胞仮説
,
RB
pp.151-154
発行日 2016年4月15日
Published Date 2016/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200422
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正常上皮細胞の真ん中にがん細胞が突然出現する細胞競合研究の基本的モデルは,多段階発がんの概念をある意味で割愛しており,ヒトに生じるがんの病態とその歴史を十分反映しないかもしれない。また,細胞社会の多様性という観点からすると,細胞競合現象は,WinnerがLoserを駆逐する,つまり,多様性を小さくする方向に働く1)。正常組織のホメオスターシス維持には,細胞競合が貢献するであろう。しかし,様々な観察は,がん細胞社会の多様性ががん進展の経過中に大きくなることを示唆している2)。このことの意義を理解するには,様々な機序によって生じる腫瘍内不均一性と,腫瘍を構成するクローン群間の協調・競合関係への洞察が重要と思われる。
近年のDNAシーケンス・解析技術の目覚ましい発達は,腫瘍を構成する細胞群のゲノム・エピゲノム不均一性を,例えば治療経過に沿って繰り返された針生検によって,腫瘍内の複数か所で,かつ経時的に観察することを可能にした3)。そこで見えてきたものは,驚くべきダイナミズムで進行するクローン進化とクローン間の協調関係であった2)。その結果もたらされるがん細胞社会の多様性が,原発巣の維持や再発・転移に重要な貢献をすることも判明しつつある。
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