特集 上肢帯機能障害と理学療法
上肢帯機能障害の評価と理学療法―PNFを中心に
新井 光男
1
,
柳澤 健
2
Arai Mitsuo
1
1広島逓信病院理学療法室
2東京都立保健科学大学理学療法学科
pp.165-171
発行日 1999年3月15日
Published Date 1999/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105259
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1.はじめに
上肢帯には解剖学的関節と機能的関節が存在する.解剖学的関節は肩甲上腕関節(肩関節),胸鎖関節および肩鎖関節であり,機能的関節には肩峰下関節と肩甲胸郭関節がある.肩関節の運動は,これらの関節が協調して作用する.肩関節は骨性接触に乏しく,他動性固定要素(passive stabilizer)である骨性,関節唇,関節包靭帯構成体および関節内陰圧等と,自動性固定要素(active stabilizer)である腱板および上腕二頭筋長頭腱により保たれている1).
そのため,肩関節は他の関節より不安定であり,機能障害の治療において筋力増強の必要性は高い.筋力増強は肩回旋筋腱板断裂における棘上筋や棘下筋等の強化が強調されるが,その他にも肩関節周囲炎や上腕二頭筋長頭腱炎,骨折後の肩関節拘縮,動揺性肩関節(loose shoulder),肩関節脱臼等でも必要となる.
肩関節周囲の機能障害では,体幹と上肢の協調性を含めた総合的な筋力を評価し,治療につなげていかなければならない.なぜならば,上肢帯の機能障害は,肩甲胸郭関節,肘関節,体幹により肩関節の動きの代償を起こしやすいからである2,3).
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