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Ⅰ.初めに
1984年高松1)は,肢体不自由を①非脳性の肢体不自由児,②療育可能な脳性障害児,③療育困難な脳性障害児の三群に分類し,肢体不自由養護学校における現状と問題点について指摘している.特に③の療育困難な脳障害児群については学校教育というフレームの中で“教育”することについての疑問を述べている.
三浦2)は全国肢体不自由養護学校在学者中の脳性麻痺児の変遷について言及し,昭和55年度の全国肢体不自由養護学校長会:教育過程委員会の調査では,それまでの7年間に衣服着脱の全介助者は平均20%強の増加率を示し,食事,排泄,移動のいずれも10%近い率で全介助が増加してきていることを明らかにした.
そして東京都の肢体不自由養護学校では約半数近くの児童が全介助であることを紹介した.また檜垣3)は,昭和58~60年度の東京都における肢体不自由養護学校高等部卒業生の進路実態と中部地方および東北地方の養護学校のそれとを比較した論文を発表し,東京都における就労割合は大きく減少してきているが他の地区ではむしろふえている所もあり,東京地区と他の地区とで抱える児童・生徒の障害の重さの違いがあることを示した.
一方,筆者4)は昭和63年度の全国特殊教育諸学校教育課程(養護・訓練)運営講座発表資料を分析し,①療育困難児の経管の管理や呼吸管理,褥創の予防など医療的にかなりのケアの必要な児童が全国的にも増加してきていること,②したがって医療サイドの密接な連携が求められていること,③しかし幾つかの肢体不自由養護学校では医療サイドとの連携を深めながら各種機器の利用や教材を作成し摂食指導やトイレットトレーニング,生活リズムの定着などに焦点を合わせた重度重複児の教育プログラムが実践されてきていることを明らかにした.
以上のことから,肢体不自由児の障害の重度化に伴い医療的配慮を必要とした,障害児教育のプログラムの精選が求められていることが理解できるだろう.
しかし檜垣の論文でも示されているように,単純に全国の肢体不自由養護学校の状況を障害の重度化のみではとらえきれない側面もある.前述した著者の調査では,先天異常の児童生徒や,知恵遅れやてんかんを併せもつ児童生徒の指導方法についての悩みを示すケースも多数あった.つまりむしろ障害の多様化が問題になっている面もあるのである.このようなことから,障害児教育における理学療法の在りかたを,現状の中で一般論として述べることはきわめて困難と言える.特に脳性麻痺児の障害の状況は他の障害と重複化しているので,単純に脳性麻痺の病態像そのもので理学療法の在りかたを議論するのは,教育場面ではあまり意味が無いように思われる.
そこで筆者としては,前任のF養護学校で1989年に作製した教育課査資料集5)と本校の昭和63年度研究報告書を比較しながら,筆者の経験を中心にその在りかたについて述べることにする6).
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