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Ⅰ.初めに
正常児における運動発達は新生児からの発達段階に応じて,その基礎となる運動要素の学習によって行なわれている.脳性麻痺児の場合は異常な緊張性反射,筋活動のアンバランスなどによって特有な肢位・運動パターンが学習される.そのために運動発達は量的にも,質的にも負の影響を受けることになる.これらの問題に対して,理学療法では主としてファシリテーションテクニックなどの運動療法を可及的早期から実施している.しかしながら,残念なことではあるが拘縮・変形が徐々に発生し,それ以降の運動発達に偏在性をもたらすことがある.このような場合,手術および装具療法が有用であるという考えは既定のものとされている.最近の油川ら1)の調査によると,施設における全入園児の装具装着率は51.9%で,手術は全入園児の約30%に施行されているとある.
これらの適用に当たって,臨床では次のような二つの経過を経ているようである.
①拘縮・変形の改善(時に,予防という観点から用いることもある.)と機能の向上とを期待し装具療法を治療プログラムに取り入れる.しかし,結果として装具の効果にも限界があるので期待するような改善が得られなくて,同じような目的で手術が実施されることとなる.
②痙性が強く,拘縮・変形が強度であったり,未治療のため強度の変形をもつ症例では逆に,最初に手術を実施し,その後療法の一つとして装具療法を行なうことがある.
いずれにしても,手術および装具療法が実施されるに当たって,その時期・内容などについては脳性麻痺の運動障害が多様な面をもつので理学療法士の判断と医師の判断とに不一致を生じることがある.また,その結果における効果判定についても同じようなことがみられる.そこで,まず全国の脳性麻痺治療に携わっている理学療法士へのアンケート調査を行ない,施設での現状を明らかにする.次に,理学療法士と医師との間の判断のくい違いについて分析し,このような場合どう考えればいいかについて,浅学であるが筆者なりに臨床経験を交じえながら述べることにする.
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