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文化庁による慣用句などの日本語調査で,本来の意味とは違った用法が広がっているとの報道がありました。例えば「檄を飛ばす」は,弱気になっている人を元気づけることではなく自分の主張を広く知らせることが本来の意味であり,「さわり」とは話の最初の部分ではなく要点のことであるといいます。何を隠そう筆者も誤りの用法を使っていた一人ですが,言葉や事項の由来などを基礎的に理解することは大変重要であると痛感しました。
さて今号の特集は「運動療法の基礎」です。様々な治療技術が展開されている理学療法において,今なお最も重要かつ主要なアプローチが運動療法であることは論を待たず,その基礎についての論考は時宜を得たものといえるでしょう。筋力低下(市橋論文)では筋活動量の視点から詳細に論じられ,OKCとCKCの中間的形態の高負荷ペダリングトレーニングの特性が紹介されています。関節可動域障害(佐々木論文)では特に下肢関節可動域へのアプローチが仔細に述べられ,極めて臨床的な内容です。中枢性運動麻痺(潮見論文)では,特にファシリテーションの効果と適応,さらに限界が述べられ,改めてその科学的根拠を検証する時期にあるという重要な指摘がなされています。バランス障害(藤澤論文)では,バランス障害を理解するためのモデルの概説に加え,そのモデルによるアプローチの理論が紹介され,特にシステム理論の重要性が述べられています。起居移動動作障害(冨田論文)では,行為と知覚システムとの関係,その協調の再確立のための提案など縦横な展開となっていて,臨床的なイメージが湧出する論を味わうことができます。いずれの論文も力作で,臨床の中の「基礎」を顧みる絶好の機会となります。
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