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マグニチュード(M)9.0の大地震と巨大津波,そして制御不能に陥った福島第一原子力発電所事故による東日本大震災の発生から6週間が過ぎましたが,一向に余震も原子力事故も収束の目途が立っていません.本震災は多くの人命と,懸命に力を合わせて築いてきた家族生活,1人ひとりの人生,そして町並みと地場産業を一瞬のうちに奪い去りました.多くの方々が避難生活を強いられるほどの天変地異の破壊力には言葉を失い,心が痛みます.日本理学療法士協会では,震災直後から「PTボランティア隊」を立ち上げ,生活不活発病予防などの理学療法支援を継続的に行っています.また各病院組織による医療支援スタッフに,全国各地から理学療法士が参加しており心強く感じています.復旧・復興には長期間を要するだけに,理学療法支援には,心身機能から町つくり再興までを視野に入れた専門職としての「知識・技術と人間力」が必要となるでしょう.多くの理学療法士が災害時の理学療法支援のあり方について関心を深めて欲しいと願っています.
本特集は「小児理学療法の新たなる展開」です.近年小児理学療法は,その対象疾患も活動領域も教育体制も変化しています.具体的には児の就学前教育の支援から就学支援,就労支援へとICFの概念を踏まえた多面的なアプローチが求められています.山川氏には脳性麻痺を,國田氏にはNICUを,平井氏には小児整形外科疾患を,また小玉氏には特別支援学校における理学療法・士の関わりを,大城氏には,小児理学療法の卒前教育の変遷と展開を解説していただきました.とくに特別支援学校に理学療法士を専門職教諭として積極的に採用し,学内教育のみでなく児の生活支援までを他の教諭と連携してアプローチする神奈川方式には注目すべきで,このような方式が全国に広がっていくことを願っています.すでにアメリカの小・中学校には作業療法士を中心に理学療法士も配属され,教育支援に関わっているように,理学療法士の新たな職域としてわが国にも定着することを期待します.
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