講座 福祉ロボット工学・3
上肢機能支援ロボットの開発と展開
小澤 拓也
1
,
古荘 純次
2
Takuya Ozawa
1
1社会医療法人 協和会 加納総合病院
2福井工業大学工学部機械工学科
pp.241-247
発行日 2011年3月15日
Published Date 2011/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101901
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わが国の上肢機能支援ロボットについて
1.開発現況と今後への期待
2007年の厚生労働省の統計によれば,脳卒中はその死亡率が悪性新生物,心疾患に次いで第3位であるにもかかわらず,入院期間は悪性新生物や心疾患の3倍以上の期間を要している.さらに「平成19年国民生活基礎調査」によれば,要介護状態になる原因の第1位は脳卒中であり,脳卒中による後遺障害が国民の日常生活に大きな影響を及ぼすことから,近年,これらに対するロボット技術の開発に注目が集まっている.
日本のロボット技術は国際的にもトップレベルにあり,産業以外の病院,福祉施設,家庭などで活用される,人間との接触を前提とした次世代ロボットを実用化することが期待されている.2005~07年には独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によって「人間支援型ロボット実用化基盤技術開発」プロジェクトが実施され,リハビリ支援ロボット(人間の状態,動作に基づき,多自由度に関節・筋のリハビリ動作を支援),自立動作支援ロボット(要介護者の立ち上がりや歩行,把持などの動作を支援),介護動作支援ロボット(主に排泄の際の介護者の抱上げ作業などに係る力支援)の技術開発と実証実験が行われた.また2009年からは生活支援ロボット実用化プロジェクトが開始され,対人安全技術の確立と技術化開発が現在も推進されている.
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