ひろば
変遷する現実への適応とストレス
奈良 勲
1
Isao Nara
1
1神戸学院大学総合リハビリテーション学部
pp.894
発行日 2010年10月15日
Published Date 2010/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101778
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- 文献概要
リハビリテーション医療の分野においても,その対象者の病態や予後に準じて,説明と同意が必要であることは言うまでもない.その中には障害受容と言われる心身の適応行動を期待した過程が含まれている.つまり,価値あるものを失った自己と社会への適応行動が障害受容であり,その一般的過程は,①ショック,②否定,③悲しみ,④取引,⑤受容と言われている.私自身が臨床現場で働いていた際には,対象者の障害受容がなければ真のリハビリテーションはあり得ないと考え,この点にも努力を注いでいた.
しかし,障害受容の概念の背景には変遷する現実への適応行動が存在するものであり,それを認識していなければ,障害受容自体が独り歩きしてしまうことが危惧される.さらに,「現実への適応」は現存するすべての人間にとって必要なことである.人間は子宮より現実世界へ出生してから死ぬまでの過程において,あらゆる状況下に曝け出されるからである.当初は重力にはじまり,授乳,排泄,更衣などあらゆるセルフケアを他者に依存している.それでも環境や社会への適応行動として初歩的移動・言語学習などに始まり,次第に高度な適応行動(情意,知,運動などの学習行動と換言してもよい)を習得して,社会の中で特定の役割を担う存在へと成長する.私はこのような過程をハビリテーション(適合・適応)およびリハビリテーション(再適合・再適応)と呼ぶこともできると考えている.
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