書評
―嶋田智明,大峯三郎(常任編集)/加藤 浩(ゲスト編集)―「実践MOOK 理学療法プラクティス 大腿骨頸部骨折 何を考え,どう対処するか」
新小田 幸一
1
1広島大学大学院保健学研究科心身機能生活制御科学講座
pp.1008
発行日 2009年11月15日
Published Date 2009/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101531
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医学系の専門書には,他を圧倒し近寄れないほどの知見を基に読者を惹きつけ,納得させようとするものと,身近な経験を基にこつこつと実例を示しながら,「あー,それでこのような治療法になるのか」と,いつの間にか読者の心を引き込んでしまうものとがある.本書は紛れもなく後者に属するものと考える.加えて,ワンポイントレッスン的な「ミニレクチャー」が実に適切な箇所に配置されており,初学者でも迷わないように配慮されている.同じように「Further Reading」では,知識の幅が広がるように,多過ぎない程度の文献が,程よく手短な説明とともに提示されており,まさに至れり尽くせりの感がある.
パート1では,まず患者と接触する前に行うべき治療に必要な情報収集に触れ,その後に行う直接的な患者との会話から得られる情報の取り方(「コツ」にあたる部分を含め)が詳細に述べられている.各術式と禁忌とされる肢位,理学療法評価法とアプローチは急性期,回復期,維持期に分けられ詳細に網羅されている.「回復期における理学療法評価」にもあるように,術後の状態・経過が良好か否かは,骨折の条件と手術結果にかかっていると言っても言い過ぎではない.この点について,治療が理学療法士の独りよがりにならないように手術記録に必ず目を通し,術者と綿密な連絡をとりながら治療を進める大切さも怠りなく諭している.
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