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理学療法が1つの専門分野として存在しているのは,社会において過去にその必要性が認識されてきたからではないでしょうか.しかし,その必要性は永続的なものではなく,必要とされ続けるには理学療法を提供する個人や団体が社会のニーズに応え続けることが重要となります.われわれ,理学療法士に課せられた使命は,対象者の障害の改善や残存能力の向上を通じて,自立した日常生活が送られるようにすることです.当然のことながら,それを可能とするには対象者の抱える問題点を機能障害,活動制限,参加制約の観点から総合的に捉え,多面的で,かつ効果的なアプローチを行う必要があると考えます.その中でも,特に機能障害は活動制限や参加制約の根底となる問題であり,この問題の改善は理学療法士としての力量が最も試されるものであると考えられます.しかし,理学療法士養成校を卒業し,国家試験に合格したばかりの新人理学療法士の多くは,十分な経験もなく,焦りや不安に苛まれているものと思います.
本書は,そのような新人理学療法士を対象として企画されたものであり,新人理学療法士にとってはバイブル的存在になりうる書であると思います.目次を見ると,①運動機能障害の病態(マクロ的視点とミクロ的視点),②運動機能障害が及ぼす影響,③運動機能障害の原因別把握,④運動機能障害の回復のメカニズムから構成されております.また,ミニレクチャーとして痙性やコラーゲンに関することや,片麻痺患者に関する治療法が盛り込まれているほか,各章ごとに新人理学療法士に対するアドバイスや,より学習を深めたい読者のために文献の紹介などもされています.さらに全体を通じて,文章は噛み砕かれ,かつ語りかけるように書かれていることから読みやすく,理解が深められるよう各章ごとにポイントが整理されています.きっと,臨床で悩まれている新人の理学療法士にとっては悩みを解決してくれる一冊になるとともに,経験を積まれた理学療法士にとっても知識の再認識に寄与する書であると思います.この本との出会いは,新人の理学療法士における不安を自信へ,さらに経験を積まれた理学療法士における自信を確信に変えてくれるものと思います.
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