書評
―対馬栄輝(ゲスト編集)/嶋田智明・大峯三郎(常任編集)―「実践MOOK・理学療法プラクティス変形性関節症―何を考え,どう対処するか―」
庄本 康治
1
1畿央大学健康科学部理学療法学科
pp.40
発行日 2009年1月15日
Published Date 2009/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101331
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わが国の総人口1億2,700万人のうち,変形性膝関節症の患者数は1,200万人を占め,要治療者は700万人と言われている.他の変形性関節症を含めると大変罹患率の高い疾患である.平均寿命の延長,高齢者数の増加などに伴って,今後理学療法士が大きく関わっていく疾患であることは間違いなく,従来の理学療法のみならず,新たな介入方法が期待される.
変形性関節症についての理学療法に関する書籍は多数あるが,理学療法士による評価や治療を単に記述しているだけの書籍も多い.一方,本書は3つのパートから構成されている.パート1の「変形性関節症患者を受け持ったらどうするか」では,理学療法士による評価から理学療法プログラム立案までの過程を,パート2の「ICFから見た理学療法介入のポイント」では,機能障害,活動制限・参加制約という各々の障害レベルへのアプローチを,パート3の「変形性関節症患者の病態を正しく理解する」では,病態解説をしている.いずれの内容も最新の知見を多く含んでいるのはもちろんのこと,臨床的な工夫や技術的内容も包含している.さらに,変形性関節症の患者さんを中心にして,理学療法に必要な様々な知識,理論が整理,展開されていて,問題解決型学習を実施しやすいのも大きな特徴である.特に,様々な知識や理論が統合されていない最終学年の学生や新人の理学療法士にとっては,自己学習する上で大変参考になる.実際に変形性関節症の症例を担当してから,様々なレベルでの臨床的意思決定で悩む人が多いと思うが,そのような時にも本書が大きな助けになるだろう.
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