増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
3)遺伝性疾患
(6)ヘモグロビン異常症
服部 幸夫
1
1山口大学医学部保健学科病態検査学
pp.1117-1121
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906375
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
血色素異常症の遺伝子診断
血色素(Hb)異常症は赤血球膜異常,赤血球酵素異常と並んで,先天性溶血性貧血の一部をなしている1).異常Hb症ならびにサラセミアがこれに入る.Hbはα,非αグロビン各2分子ずつから成る四量体で,赤血球内に限局し,体内での酸素運搬の機能を担っている.αグロビン遺伝子は第16染色体短腕末端(16p13.33)に5'-ζ-α2-α1の順に並び,非αグロビン遺伝子群は第11染色体短腕(11p15.5)に5'-ε-Gγ-Aγ-δ-β-の順に配列している(図1).発生に伴い原則として5'側から順に発現する.つまり,ζ,εは胎芽期,2個のγグロビン遺伝子Gγ,Aγは胎生期,δ,βは主に生下後に発現される.その結果,出生を境に胎生のHbF(α2γ2)の産生は低下し,HbA(α2β2)がそれに代わる,いわゆるスイッチングが行われる.成人ではHbAが96%,HbA2(α2δ2)が2.5〜3.5%,そしてHbFが1%以下を占める.したがって,成人のHb異常症は主に,HbAを形成するα,βグロビンの異常を意味する.
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.