増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
3)遺伝性疾患
(7)家族性腫瘍
林 泰秀
1
1東京大学大学院医学系研究科(小児科)
pp.1122-1126
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906376
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はじめに
近年の分子生物学の進歩により,発癌の発症機構の解明が急速に進み,癌予防の戦略が具体的となった.このため家族性腫瘍(familiar tumor)に対する認識が高まり1),研究も進展している.これまでに,癌抑制遺伝子として網膜芽腫(retinoblastoma;RB)からRB遺伝子が,ウィルムス(Willms)腫瘍からWT1遺伝子が単離され,さらに17番短腕(17p)にあるP53遺伝子が単離されている.また胚細胞変異を有する家族性腫瘍のうち,リー-フラウメニ(Li-Fraumeni;LF)症候群がP53遺伝子の異常が原因で発症することが見いだされ2),9pから単離されたP16遺伝子が3)家族性悪性黒色腫の原因遺伝子であることが判明し4),癌は遺伝子の病気であるばかりでなく,その一部は遺伝することが明らかになった.さらに,DNAチップやマイクロアレイを用いたコンピュータ遺伝子工学の進歩により,1塩基の違いを簡便に論ずる時代が到来し,正常な表現型を示す集団内において,1塩基の違いによるsingle nucleotide polymorphisms(SNPs)による癌になりやすさの研究も始まっている.
本稿では家族性腫瘍特にLF症候群,家族性悪性黒色腫,およびその他の家族性腫瘍と高発癌性遺伝病および多因子癌素因について,最近の知見を述べる.
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