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はじめに
Charcot-Marie-Tooth病(CMT)は1886年にフランスのCharcotとMarieら1)が,また,同じ年にイギリスのTooth2)が最初に記載した,緩徐進行性の四肢遠位筋の筋萎縮と筋力低下を特徴とする遺伝性ニューロパチーである.CMTは遺伝性末梢神経疾患の中で最も多く,2,500人に1人の頻度で生ずる.CMTは単一疾患ではなく異質性があり,遺伝性運動感覚性ニューロパチー(HMSN)とも呼ぶ.電気生理学と病理学的研究に基づきCMTは2つのグループに大別される3).CMTの第1型(CMT 1,HMSNI)は脱髄型で,運動神経伝導速度(MNCV)が中等度から高度に減少し,神経生検でonion bulb形成を示す.第2型(CMT 2)は軸索型でMNCVは正常か軽度減少でM波の振幅は減少し,神経生検では前者の肥厚型の特徴は呈しない.この分類はCMT 1がシュワン細胞の異常で生ずる可能性を示唆していた.CMT 1の分子遺伝学的病因の解明は過去8年で急速に進んだ4).CMTの家系を用いた連鎖解析分析でいくつかの原因遺伝子座位が明らかとなり,3つの原因遺伝子が単離された.また,2つの違ったメカニズム,重複と点変異がCMT 1を起こしていることが明らかとなった.
hereditary neuropathy with liability to pressure palsies (遺伝性脆弱性ニューロパチー;HNPP)は外傷や圧迫直後にしびれ,筋力低下などを繰り返しきたすニューロパチーで5),病理学的にはミエリン鞘のソーセージ様(tomaculous)の局在性肥厚を呈し,電気生理学的には伝導ブロックを伴う神経伝導速度の軽度低下を示す.HNPPは臨床的にCMTと異なるニューロパチーであるが,相反組み換えでCMT 1 Aの重複する部位が逆に欠失することで生ずることが明らかとなった.本稿ではCMTとHNPPの病因と遺伝子診断について概説する.
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