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あとがき
関谷 紀貴
pp.802
発行日 2023年7月15日
Published Date 2023/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542203359
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暑い夏がやって来ます.恒例の夏休みを前に,皆さまはどのような計画を立てていらっしゃるでしょうか.私は2020年からの3年間,夏が訪れるたびに繰り返された感染の波に翻弄され,同じ波ならHawaiiに行ってNorth Shoreの大波に飲まれたい……とわけのわからない妄想で何とか気分をまぎらわせ,やっと今年の夏を迎えられたという心境です.
今から17年前の夏,私は地域医療研修の一環で西表島の西部診療所に2週間ほど滞在する機会をいただきました.西表島といえば,天然記念物であるイリオモテヤマネコ,カンムリワシ,セマルハコガメなどが有名です.滞在中は離島医療の一端を勉強させていただいただけではなく,島の約90%が亜熱帯型のジャングルに覆われ,東洋のガラパゴスともいわれる豊かな自然を存分に味わうこともできました.特に印象的な経験だったのは,八重山地方で旧盆の行事として行われる“アンガマ”に参加する機会をいただいたことです.地域ごとに多少の差があるようですが,深いしわが刻まれたおじいさんとおばあさんのお面を着けたアンガマとその一行が招待を受けた家々を訪問し,三線や太鼓などを奏でながら仏壇を拝み,舞い踊り,旧盆に帰ってきたご先祖の霊を慰めます.明るい雰囲気ながら死者を弔いつつ想いをはせる時間として,家族一同が心から大切にされているようでした.最後に美しく静かな砂浜で手を合わせて祈る時間がありましたが,現世と幽世が交わるような不思議な感覚に包まれたことを今でも覚えています.島は異なりますが,石垣島のアンガマについて水木しげるさんが次のような文章を書かれているのですが,その意味が身に染みた出来事でした.
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