異常値をひもとく・11
異常ヘモグロビン―血糖管理マーカー値乖離の原因としての可能性
中西 豊文
1
1大阪医科大学総合医学講座・臨床検査医学
pp.1515-1521
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542103713
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はじめに
1949年Paulingらにより“蛋白質の構造異常→機能異常→病気の発症”の分子病概念が提唱され,鎌形赤血球症の発見を契機に異常ヘモグロビン(hemoglobin;Hb)研究は分子病理学の発展に多大な貢献をした.これまでに発見された異常Hb症は,明らかな臨床所見(チアノーゼ,多血症,溶血性貧血,メトHbなど)を呈するタイプと臨床的に無症状で,HPLC(high-performance liquid chromatography)法による糖化Hb(HbA1c)溶出パターン異常により発見されるタイプに分けられ,後者のタイプが近年増加している1~8).
最近のグローバル化は“人の流れ”を活発化させる.その結果,わが国の医療現場においても疾病の多様化など,これまで日本社会では経験のないまれな疾病/症例に遭遇する機会が増えるものと考えられる.
本稿の異常Hbに関しても,国際化を反映して日本人には非常にまれなone-point変異も報告されており,日頃から異常/乖離データを見いだし,的確に対処できなければ,誤診や疾病の見落としにつながる.今回,HbA1c溶出パターン異常から見いだされた異常Hb症の詳細解析例を提示/解説し,読者の方々の参考としていただきたい6,9).
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