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糖尿病の血糖コントロール指標としてのヘモグロビン A1c値と血糖値
1 . 血糖コントロールの意義とその指標
糖尿病治療とは,糖尿病を最も特徴付ける慢性高血糖を,種々の手段により正常に近付け,網膜症,腎症など糖尿病に特有な慢性合併症を発症させないことである.また,心血管疾患(虚血性心疾患および脳卒中)は糖尿病に特有ではないが,高血圧症や高脂血症とともに慢性高血糖もその発症のリスクであることは間違いなく,血糖値を正常に近付けることは心血管疾患の発症を予防する意義もある.つまり糖尿病治療は血糖コントロールであり,それは合併症を予防するという目的で行われる.
治療が奏効しているかどうかを評価する検査,すなわち血糖コントロール指標は,1980年代以前には尿糖検査と血糖値しかなかった.それも,外来受診の際に測定するものであった.尿糖検査は低血糖に関しては無力であるので,空腹時は陰性で食後には(±)程度であるのがよいとされたが,今日の知識からすればやや甘めのコントロールが推奨されていたと解釈される.尿糖排泄閾値には個人差があり,尿糖検査のみで済ませるわけにもいかず血糖値で確認することが必要であった.一方,外来受診時に検査する血糖値は食事や運動の影響を受けるものであり,いわば,瞬間風速をみているようなものであった.平均風速に相当する検査が希求されていた.ヘモグロビンA1c(HbA1c)測定がそのような検査に相当することがわかり,急速に普及した.HbA1cは過去1~2か月の平均血糖を反映する.同じく1980年代に血糖検査は病院の検査室だけでなく,患者自身が自宅で検査できるようになった.血糖自己測定(self monitoring of blood glucose,SMBG)である.
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