今月の表紙 代表的疾患のマクロ・ミクロ像 非腫瘍・12
肺結核のマクロ・ミクロ像
小松 明男
1
,
坂本 穆彦
2
Akio KOMATSU
1
,
Atsuhiko SAKAMOTO
2
1東京都保健医療公社多摩南部地域病院検査科
2大森赤十字病院検査部
pp.1492-1494
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102872
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結核はヒト型あるいはウシ型の結核菌の感染により惹起される炎症である.しかし酪農製品を含め,食品の衛生管理がほぼ行き届いている現代社会では後者によるものは稀と考えられている.今日のわが国における主たる感染経路は,結核菌を排菌している患者からの咳やくしゃみなどを介しての飛沫感染と思われる.
体内に浸入した結核菌に対する最初の防御反応が一次結核であり,その病巣を初期変化群という.初期変化群は,肺内の初感染巣(Ghon focus,ゴーン巣)と肺門リンパ節病巣からなる.体内に経気吸引された結核菌は,肺胞マクロファージで処理できないことが稀ならずある.この場合に結核菌は肺胞内で増殖・定着し,限局性感染巣を形成すると考えられる.これが初感染巣であり,多くは肺下葉の臓側胸膜直下の末梢肺実質に位置する,直径1.0~1.5cmの境界鮮明な結節である.通常中心部は灰白色を呈し壊死に陥るが,陳旧化すれば線維化し石灰化する.一方,初感染巣の結核菌はリンパ行性に進行し上記の肺門リンパ節炎を引き起こす.初期感染により体内で免疫が形成され効果的に機能すると,一次結核では発症しないことが多い.一般には,この段階では約9割は限局化し無症状で発病しないと考えられている.しかし,少数ながら発症する場合もある.進行性一次結核は,幼小あるいは免疫不全を有する成人などで初期変化群に限局化せず,肺などに破壊的病変をもたらす病態である.この差異,すなわち初期感染直後に全身に蔓延するか限局化するかは,主として個体の免疫能によると考えられる.
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