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脳出血には,くも膜下出血と脳内出血とがある.くも膜下出血は,くも膜下腔の比較的大きな筋性動脈の破綻性出血である.臨床症状は重篤な場合が多く,初回の出血で約1/3が死亡する1,2).この疾患の最大の原因は囊状動脈瘤の破裂である.囊状動脈瘤は,剖検で詳細に検索しても小児期にはみられないが,成人(30代から60代)では有病率に年齢差が認められないことが定説とされている.すなわち先天的に筋性動脈中膜形成不全・欠損があり,初期には形態的にも臨床症状においても変化はみられないが,成長とともに圧負荷に抗しきれなくなり,閾値を超えると動脈瘤が形成され,しばしば破裂することがあると考えられている3).また高血圧,多囊胞腎,大動脈縮窄症,褐色細胞腫などは危険因子であり,その発生頻度には正の相関関係がある3).好発部位は,内頸動脈系の分岐部(約90%)で,ウィリス動脈輪付近ことに前半球である.剖検症例のくも膜下出血の20~30%に多発病巣が認められる1~4).アメリカ合衆国400万人を対象にした剖検と血管造影の結果によると,検索の約2%に無症状の囊状動脈瘤がみられる1~4).図1はくも膜下出血の原因となった左中大脳動脈領域の血管分岐にできた脳動脈瘤で,破裂し広範な出血を惹起し,死の転帰を取った.
くも膜下出血がウィリス動脈輪付近の比較的大きな筋性動脈の破綻性出血でくも膜下腔への出血であるのに対し,脳内出血は小型血管の破綻性出血である.すなわち脳実質内の直径300μ以下の小型筋性動脈ないし細動脈の微小動脈瘤(Charcot-Bouchard microaneurysm)の破裂と考えられている.高血圧との関係が深く,約50%に高血圧を認め,逆に高血圧の死亡原因の15%が脳内出血である2).好発部位は,視床・被殻が殊に多いが大脳基底核領域(約65%),橋(約15%),小脳(約8%)である2).天幕切痕ヘルニア,側脳室穿破などの重篤な合併症がしばしば続発する.図2は高血圧症例の髄膜内の細動脈で,中膜に著明な硝子様変性がみられる.進行した高血圧症では全身の細動脈に硝子様変性が出現することが多い.
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