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病理総論では,梗塞は終動脈(機能的終動脈も含む)の閉塞・高度の内腔狭窄による灌流領域の壊死である.脳梗塞は,脳動脈閉塞による虚血によって引き起こされる灌流領域の融解壊死である.脳虚血はこれよりも若干広義で,脳全域をびまん性に傷害する機能的なものも含まれる1).損傷の程度は,部位,閉塞血管の大きさ,側副血行路の状態などが影響する.側副血行路は髄膜近傍に発達し,深部には乏しい.脳梗塞は粥状硬化症と相関関係があり,粥状硬化症の合併症として死亡原因の主座を占める.脳梗塞と脳出血の発生頻度を比較すると,アメリカでは脳梗塞85%,脳出血15%で,脳梗塞が圧倒的に高い.本邦でも,疾病構造の欧米化とともにこの傾向が著明になった.人口10万人当たりの死亡率でみると,1970年代までは脳出血のほうが脳梗塞よりも死亡率が高かったが,以後逆転し現在では脳梗塞のほうが高く,2倍以上となっている2).粥状硬化症が生活習慣病の中で重要視される一因となっている.
上記のとおり脳梗塞は血管の閉塞に起因するが,原因が脳内に限局する疾患か,他臓器にも原因の一部があるか,という観点から脳梗塞は脳血栓と脳塞栓とに分けられる.脳血栓は脳内における血栓形成が原因であり(in situ thrombosis),脳塞栓は脳以外の臓器で栓子が形成されて血流により脳に運ばれて内腔を閉塞する疾患である(図1).栓子が形成される脳以外の臓器は多岐にわたるが,最も高頻度にみられるのは心疾患を有する心臓である.ことに心筋梗塞,弁膜症,心房細動には合併症として壁在血栓がしばしばみられる.この壁在血栓が時に栓子となり,脳塞栓を惹起する.心臓以外では内頸動脈の粥状硬化症からのプラークの剝離,心奇形に伴う奇異塞栓,骨折に伴う脂肪塞栓などが重要である.脳塞栓の好発部位は,中大脳動脈の灌流領域,分岐部,粥状硬化症による狭窄病変のみられる所である.
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