映画に学ぶ疾患・22
「未来を生きる君たちへ」―復讐と赦しの精神構造
安東 由喜雄
1
1熊本大学大学院生命科学研究部病態情報解析学分野
pp.1546
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102873
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デンマークの小さな町に住むエリアス少年は,アフリカの紛争地域で働く外科医アントンを父に,地元で内科医として働くマリアンを母にもっている.映画「未来を生きる君たちへ」(スサンネ・ビア監督)の話である.アントンはアフリカの紛争地域で身も心も傷ついた人々の対応に追われていたが,ある日久しぶりに息子の住む町へと帰ってくる.エリアスは父のことが大好きだ.
エリアスの小学校にイギリスからクリスチャンという少年が転校してくる.彼は母を最近癌で失い,父とともにこの町に住む祖母を頼ってやってきたが,いまだに母の喪失感から抜け出せないでいる.エリアスの隣に席を得たクリスチャンは,放課後不良グループからエリアスが苛められたとき,一緒にいたためにとばっちりを被ることになる.歪んだ正義感をもつクリスチャンは,次の日,いじめグループの番長にナイフをちらつかせながら暴力を振るい傷を負わせ,警察沙汰になる.話は進んで,ある日,広場で遊んでいたエリアスの弟がある子どもといさかいとなったが,その父親のラースがアントンに食って掛かり,暴力を振るう.アントンはその場をやり過ごしたが,エリアスやクリスチャンたちにはその態度が物足りず,不満に感じられる.アフリカで憎しみの連鎖から起こる抗争を目の当たりにしてきたアントンは暴力の無意味さを説くが,子どもたちは納得がいかない.アントンは無抵抗主義の尊さを示すため,今度はラースの職場を訪れ,彼を諭そうとするが,そこでも暴力を振るわれる.子どもたちは,その光景にストレスが増すばかりであった.
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