今月の表紙 臨床微生物検査・3
市中感染型MRSA
位田 剣
1
Ken INDEN
1
1東北大学病院検査部
pp.248-249
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101562
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus;MRSA)は1960年代に初めて英国から報告されて以来,院内感染の原因菌として世界的にも最も重要度の高い菌となっている.それから40年近くの歳月を経て,その問題は院内から市中へと広がりをみせ,欧米を中心に市中感染型MRSAによる感染症が頻発するなど新たな展開をみせている.市中感染型MRSA(CA-MRSA)とはcommunity-associated MRSAの略であり,HA-MRSA(healthcare-associated MRSA:病院感染型MRSA)と区別されている(表1).
CA-MRSAによる感染症の臨床所見は皮膚・軟部組織感染症が最も多く,クモに咬まれた(クモ刺咬症)ような皮膚病変を伴うこともあるとされている.小児では,壊死性肺炎の死亡例も報告されており,特にインフルエンザウイルス感染症に合併した肺炎症例における高い死亡率が報告されている1).これらのCA-MRSAによる感染症は通院歴・既往歴のない健常人が罹患していることが,これまで医療施設内で感染するとされていた従来のMRSA感染症と大きく異なる特徴である.
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