シリーズ最新医学講座・Ⅰ 糖鎖と臨床検査・3
糖鎖遺伝子ライブラリーの構築と糖鎖合成
清原 克恵
1
,
佐藤 隆
1
,
伊藤 浩美
2
,
成松 久
1,3
Katsue KIYOHARA
1
,
Takashi SATO
1
,
Hiromi ITO
2
,
Hisashi NARIMATSU
1,3
1独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖医工学研究センター糖鎖遺伝子機能解析チーム
2独立行政法人産業技術総合研究所 糖鎖医工学研究センター糖鎖分子情報解析チーム
3筑波大学連携大学院人間総合科学研究科(病態制御医学)
キーワード:
糖鎖遺伝子
,
Glycogene
,
糖転移酵素
,
硫酸転移酵素
,
糖ヌクレオチド輸送体
Keyword:
糖鎖遺伝子
,
Glycogene
,
糖転移酵素
,
硫酸転移酵素
,
糖ヌクレオチド輸送体
pp.343-348
発行日 2008年3月15日
Published Date 2008/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101559
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はじめに
現在,特に癌関連の臨床検査で用いられている検査マーカーには,消化器癌のマーカーであるCA19-9を代表として,糖鎖もしくは糖蛋白質を認識する抗体を利用したものが多い.糖鎖の構造は分化段階など細胞の状態で大きく変化することが古くから知られており,細胞が脱分化した状態である癌では正常細胞では合成されない異常な糖鎖や糖蛋白質が生合成され,これらが細胞表面に現れたり,分泌されたりして,癌マーカーとなっているのである.糖鎖の生合成は小胞体やゴルジ装置に存在する糖転移酵素によって行われる.糖転移酵素以外にも糖供与体である糖ヌクレオチドの合成酵素,糖ヌクレオチドを細胞質からゴルジ装置内へ輸送する糖ヌクレオチド輸送体,糖鎖に硫酸基修飾を行う硫酸転移酵素などが関与している.それらの数はおよそ200種類存在し,生体内ではそれらが高度に協調して働き,複雑な糖鎖を合成している.われわれはそれら糖鎖合成に関連する蛋白質をコードする遺伝子をまとめて“糖鎖遺伝子(glycogene)”と呼び,新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の糖鎖合成関連遺伝子ライブラリー構築プロジェクト(GG project)において,DNAデータベースからヒトの糖鎖合成関連遺伝子(糖鎖遺伝子)を網羅的に探索し,基質特異性などの機能解析を行った1).本稿では糖鎖生合成の主役である糖転移酵素遺伝子のクローニングと糖転移酵素を用いた糖鎖合成について紹介する.
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