特集 遺伝子検査―診断とリスクファクター
3.遺伝子診断の実際
1) 悪性腫瘍 (1)癌の浸潤,転移を制御する遺伝子と遺伝子診断
村上 善則
1
Yoshinori MURAKAMI
1
1東京大学医科学研究所 癌・細胞増殖部門 人癌病因遺伝子分野
キーワード:
浸潤・転移
,
ゲノム異常
,
エピゲノム異常
Keyword:
浸潤・転移
,
ゲノム異常
,
エピゲノム異常
pp.1356-1360
発行日 2007年11月30日
Published Date 2007/11/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101421
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はじめに
癌は多数の遺伝子変異の蓄積により多段階に発生,進展し,最終的には他臓器へ浸潤,転移することにより宿主をたおす.そこで,癌の浸潤,転移を制御する分子を同定し,診断,治療の標的として応用する基礎・臨床研究が盛んに行われている.浸潤,転移抑制治療の確立はまだ先だとしても,浸潤,転移の鍵となる標的分子を用いた質的診断はある程度実用化されている.もちろん,従来から行われてきた画像診断や腫瘍マーカーとの比較のうえで,これらの遺伝子診断の有用性が評価されるべきであるが,少なくとも癌の微小転移の検出や,摘出した癌の網羅的遺伝子発現,構造解析による転移性の予測などにおいては,他の診断技術では検出できない新しい成果が認められている.ここでは,癌の浸潤,転移の概要を示し,いまだ臨床的有用性の確立までは至っていないが,関連する遺伝子診断の現状をまとめることとする.
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