内科医が知っておきたい小児科学・最近の話題・6
小児悪性腫瘍と遺伝子
林 泰秀
1
1東京大学医学部小児科
pp.1211-1215
発行日 1997年6月10日
Published Date 1997/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402904569
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小児悪性腫瘍の約半数は白血病で,残り半数は固形腫瘍であるが,成人癌とは異なって胎児性癌や肉腫が多く,腺癌が少ないのが特徴である.また,小児悪性腫瘍は発癌物質に曝露されることなく発症するため,以前から遺伝的背景が考えられていた.病理学的診断は,未分化型組織像が多いため困難なことが多く,診断が不明なものは一括して小円形細胞肉腫(small round cell sarcoma)と呼ばれていた.
近年,網膜芽腫(RB)とウイルムス腫瘍(WT)では原因遺伝子が単離され1,2),前者は細胞周期に関与し,後者は性器・泌尿器系の分化に重要な遺伝子であることが判明した.また,軟部肉腫では切断点近傍遺伝子が単離され3〜5),神経芽腫ではN-myc遺伝子以外に癌抑制遺伝子が探索されている6).白血病では多数の癌関連遺伝子が白血病の転座や切断の近傍に座位し,白血病の発症や進展に関与することが判明してきた3,7).本稿では,小児固形腫瘍に関連する遺伝子と乳児白血病,そして癌になりやすい体質につき述べる.
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