特集 知っておきたいゲノムの知識
ゲノム研究のもたらすもの
癌の遺伝子診断
小澤 敬也
1
1自治医科大学内科学講座血液部門,輸血・細胞移植部,分子病態治療研究センター遺伝子治療研究部
キーワード:
DNAチップ(DNAマイクロアレイ)
,
網羅的遺伝子発現解析
,
造血器腫瘍
,
病型分類
,
予後予測
Keyword:
DNAチップ(DNAマイクロアレイ)
,
網羅的遺伝子発現解析
,
造血器腫瘍
,
病型分類
,
予後予測
pp.114-117
発行日 2004年2月1日
Published Date 2004/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414101095
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遺伝子診断は癌の診療に必須のものとなっているが,臨床の現場で現在利用されているもののほとんどは,特定の遺伝子に焦点を当てた研究から発展してきたものである.たとえば,疾患に特徴的な染色体転座がある場合,切断点に存在する遺伝子をクローニングし,それを遺伝子診断に利用するというものである.あるいは,基礎研究から明らかにされた癌遺伝子や癌抑制遺伝子の関与を調べることもよく行われる.
しかし,このような従来の方法では,ごく限られた数の遺伝子について調べられるだけで,個々の症例における癌の全体像を把握しているとはとても言い難い.また,染色体異常の有無に左右されることになり,遺伝子診断を実施できないことも多い.さらに,形態学的には同一のグループに入る癌であっても,遺伝子発現パターンには違いがあり,それが癌細胞の悪性度を含めた生物学的性質を反映しているものと思われる.細胞の分化の方向性とそのレベル,増殖動態と細胞周期状態,DNA修復能,接着性など,癌細胞の性質に関わるさまざまな遺伝子の発現状態の全体像を把握する必要があり,そのなかのいくつかを取り出しただけでは意味をなさないことが多いと思われる.
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