トピックス
癌遺伝子と腫瘍の悪性度
野島 孝之
1
1金沢医科大学病院病理部
pp.229-230
発行日 1995年3月1日
Published Date 1995/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543902276
- 有料閲覧
- 文献概要
癌を引き起こす遺伝子を癌遺伝子と呼ぶ.癌研究の中で発癌機構に対する考えかたの基礎となったのは,1911年,Rousによるニワトリに移植可能な肉腫の報告であった.これはRNAウイルス(ラウス肉腫ウイルスと命名)で,腫瘍細胞あるいは腫瘍細胞抽出濾過液を他のニワトリに注射すると腫瘍が形成され,ウイルスが正常細胞を腫瘍へ形質転換させる遺伝情報を持っていることが提唱された.
しかし,癌遺伝子が存在すればすべて発癌するわけではない.ウイルスの癌遺伝子領域に相同性を有する配列がヒトをはじめ別の種の正常細胞にも存在することが明らかとなった.このような正常細胞に見られる相同配列を癌原遺伝子と呼んでいる.正常細胞では通常これらの癌原遺伝子は発現はしているがよく制御され,器官の成長や発生過程に重要な役割を担っているが,細胞の悪性化に関与していない.
Copyright © 1995, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.