特集 看護の質に何を期待するか
臨床医の立場から
日本には看護の質を論じられる病院がいくつあるだろうか—循環器内科医がみた看護の現状と打開のための一私案
石村 孝夫
1
1北野病院循環器内科
pp.500-501
発行日 1993年6月1日
Published Date 1993/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541900378
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本稿の依頼を受け,正直なところ私は多少の戸惑いを感じた.というのはナース本来の業務について真の意味で「質の高い看護とは?」を論じることができるレベルの病院が日本に一体いくつあるか疑問だからである.ドクターの下請けとしてのナースではなく,ナースがドクターとまったく同一レベルで看護についてディスカッションできる病院は,極めて先進的な東京のごく一部の病院を除いては日本には存在しないのではなかろうか.看護の質を語る以前のレベル,すなわち病院のシステムに問題のある病院の方が多いように思われる.
「いい(臨床につよい)ドクターのいるところにはいいナースが育つが,いいドクターのいないところにはいいナースは育たない」というのが私の持論である.日本の多くの病院は大学の“ジッツ”(傘下)病院として運営されており,昨日まで大学で研究に取り組んでいたドクターが,病院の臨床現場にまわってくる.そのドクターが卒後研修の中で本当によい臨床とは何かということを学んだことがなければ,大学病院での“ドクターの一方的主導型〜ナースは下請け”パターンの医療しか行われないことになる.「いい看護とは?」などということに興味をもっているドクターが果して周りにどの位いるか考えてみればよい.よい医療(看護も含めて)が行われるかどうかは,きれいな建物でも立派な設備でもなく,運営が如何にうまく行われているか,ひとえにシステム,ソフトウェアによる.
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