ホスピタルトピックス 診療
医療費の問題
佐分利 輝彦
pp.92
発行日 1966年4月1日
Published Date 1966/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202838
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医療産業は第3次産業に属している。第3次産業は,周知のように,第1部門:運輸・通信業・ガス・電気・水道業,第2部門:卸売・小売業,金融・不動産業,第3部門:サービス業(飲食・娯楽・保健・自由職業など),第4部門:公務,軍隊,の4部門に分類されるので,医療産業は第3次産業のなかの第3部門であるサービス業の範ちゅうにはいることになる。
ところで,人びとが第3次産業に要求しているものは,具体的な形をもった"物財"ではなく,目に見えがたい性質をもつ"サービス"である。第3次産業の多くのものは,このサービスを作りだすさいに,第2次産業のとくに重化学工業に比べて,物的な資本,とくに"機械設備"よりも"人間"にたよる面が相対的に大きい産業である。したがって,第3次産業は,全体として"物財の経済学"とはやや性格のことなる"サービスと人間の経済学"が必要な分野だということになる。つまり,第3次産業の提供するサービスについては,工業が提供する商品に焦点をあわせて構成された経済学の仮説や用具は,そのままの形ではあてはまらない。このため,サービスの料金には,普通の需要供給の原理そのものは適用しえないのであって,市場機構を通ずる需要・供給の原理と,社会的・公共的な配慮との併用によって価格が決まるという意見がだされた。
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