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Closed Systemと医師の勤務体制(2)—病院人事管理のうち
石原 信吾
1
1病院管理研修所
pp.7-13
発行日 1955年11月1日
Published Date 1955/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201024
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テイラー(Taylor)を先達とする所謂科学的管理法が「正当なる作業量に対する正当なる賃金」(fair day's pay for fair day's task)の決定ということから出発したことは周知の通りである。賃金乃至俸給が,提供された労働力に対する反対給付である以上,この兩者の正当な等価関係を樹立することは,経営の合理化という点で第一の先決問題であることは言うまでもい。テイラーはその為に先ずtaskの標準化を科学的に検討することから始めたのである。
所で,病院に於ては,特に勤務医師の勤務に関して,このtaskの標準化及びtaskとpayとの正当なる等価的結び付きは完全に実現しているであろうか。医師に言わせれば,自分達は働きの割合に俸給が少いと主張するであろうし,病院側に言わせれば,医師は出来るだけ仕事を少くすることばかり考えていると主張するかも知れない。其処から窺われることは,現在わが国の病院では,医師のtaskとpayとは必ずしも等式関係にはなつていないということである。仕事は仕事俸給は俸給ということであれば,働かせる側では出来るだけ多くの働きを望むし,働く側では出来るだけ仕事の少いことを願うのは,当然であろう。とすれば,其処では医師の働きを刺戟するものは,少くとも俸給ではない。では何が刺戟となるか。場合によりそれは「医は仁術」という仕事に対する使命観だと言われる。
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