連載 医療BSC基礎講座・8
BSCにおける経営戦略(その2)
髙橋 淑郎
1,2
1日本大学商学部
2日本医療バランスト・スコアカード研究学会
pp.694-696
発行日 2011年9月1日
Published Date 2011/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102093
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
■ビジネス・ポリシーとBSC
前回では,BSCにおける戦略は事業戦略に限りなく近いことが多く,また病院の現場で作成されるBSCは,事業戦略よりも機能戦略と捉えたほうが正しい場合も多いことを述べた.そうすると,病院の成長戦略,全社(全病院)戦略が希薄になるのではないかという疑問が残り,特に全社戦略をどのように扱うのかを考えることが必要になる.筆者は病院BSCにとっての戦略には,単に事業戦略中心ではなく,何か適切な意味合いと表現がないかと考え,1960年代にビジネス・ポリシー(business policy)として考えられてきた意味合いにたどり着いた.
ビジネス・ポリシーは,伝統的なビジネス・スクールの科目であり,ハーバード大学でも主要な科目であったが,現在では戦略経営(strategic management)と呼び名が変わり,さらに今も変化している.経営戦略との関係を考えると,そもそも経営戦略論とはジェネラル・マネジャーの「ものの見方」であるとして,ビジネス・ポリシーという科目からスタートしたされる1).ハーバード大学経営大学院の経営戦略の原型である.そこではビジネス・ポリシーを策定する手法の開発が行われ,思考プロセスを定式化する努力がなされた.それが1960年代からのシステムズ・アプローチであり,本連載第3回でも触れたPPBS(Planning-Programming-Budgeting System)もその範疇に入る.別の立場では,「企業の生き残り」から「外部環境の変化への適応」を目指し,組織と環境との調整へと変化していった.また,経済学や産業組織論からのアプローチもあった.
Copyright © 2011, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.