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病院がどのような意思や意図で経営されているかに関係なく,病院を取り巻く環境は常に変化している.病院が成長発展していくには,環境に適応し,環境を先取りして行動を変化させていくことが必要である.したがって,戦略がクローズアップされるのは,経営環境が大きく変化する場合,あるいは,組織が大きく自己革新しようとする場合が多い.前者では,病院の内部管理の問題以上に,病院と環境との関係が重要な経営課題として浮上してくる.すなわち,病院の長期存続のために何を行い,いかに業績を高めるかという問題である.これは組織の有効性の問題として捉えることができる.組織の長期的成功と生存は,能率よりも有効性の向上に依存している1).したがって,環境変化が大きいほど経営者の経営感覚,経営能力が問われ,逆に環境が安定している場合は,管理技法や管理者レベルの能力が問われることが多い.
戦略の定義は論者によって様々だが,病院が将来どうなりたいか,どうすればそこに辿り着けるのかを考えることが戦略とざっくり考えると,戦略の策定・実行は,経営者の大きな業務の1つである.どのような病院を目指しているのか,地域社会とどう係わり合っていくのか,患者・家族にどのようなサービスを提供していくのかという将来構想を描くことが最初に求められ,それがいわゆる病院のドメイン,病院のコンセプトになる.すなわち,病院が勝負する土俵,生存領域を決定するということである.そして,それを達成する道筋を考えることが経営戦略論には求められている.また,戦略がなければ多くの病院職員を一定の方向にベクトルを揃えて,協働意欲を維持していくことは難しい.
そこで本稿では,青島・加藤(2003)2)を参考に,経営戦略を「経営体(病院,企業など)のあるべき将来像を意図を持って描き,それを達成するための道筋の仮説」と広く定義する.
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