連載 医療BSC基礎講座・3
BSCの起源を探る
髙橋 淑郎
1,2
1日本大学商学部
2日本医療バランスト・スコアカード研究学会
pp.304-307
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101938
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1987年,キャプランらは著書『Relevance Lost』で,競争的な経済状況の変化とそれに対する企業戦略の遂行において,当時の財務指標ではスピード・内容の面とも追いつくことができないと指摘した1).管理会計の経営意思決定に対する有用性の喪失(Relevance Lost)問題である.経済的効率優先の企業経営の見直し,顧客志向へのシフト,多品種少量生産,サービス経営の増加などの急激な変化にあって,経営内部に向けた伝統的管理会計の知識や手法では,現在の企業のあり方を示せない,あるいは実務と乖離し整合性が失われるという主張であった.キャプランらは「管理会計システムは組織の業務や戦略を支援するよう設計することができ,またそうであるべきである」としている.
この喪失した「レレバンス」をどう再度獲得していくのかについて,キャプランは管理会計の枠組みを拡張あるいは伸張させ,管理会計の中で解決し,レレバンス・リゲインドをいかに図るかということを考えていた2).しかし,後述するように,キャプランはBSCの発案・発展において経営学的手法を多く取り入れ,その根底には管理会計の領域をはるかに超えた思考があると考えられる.したがって筆者は,キャプランは管理会計の歴史的背景やアメリカの近視眼的・財務主体の業績評価に不満を感じ,伝統的な管理会計の限界を超えないと管理会計が生き残れないという意味合いで上記の書籍を著し,それが1992年のBSC誕生へつながったと考える.
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