連載 鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・43
―長崎原爆とひとりの医師②―長崎の鐘が鳴る
鉄郎
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1NPO法人アットホームホスピス
pp.308-309
発行日 2011年4月1日
Published Date 2011/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101939
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『長崎の鐘』(アルバ文庫)は永井 隆が「第11医療隊救護活動報告書」を長崎医科大学に提出した後,書き始めた著作の第1作目である.長崎の鐘とは浦上天主堂の「アンジェラスの鐘」を指し,「平和を願う鐘の音」を意味する.本書が元になり,サトウハチロー作詞・古関裕而作曲の「長崎の鐘」が生まれた.今回は前書の内容から,彼の平和への願い,その源流に触れた随想を綴る.
表紙を開くと,片岡弥吉が序文を記し,その冒頭に永井の妻の死について記してある.書中で永井が妻の死について触れていないため,一筆加えたと受け取れる.あえて書かないで沈黙を守る,その不自然さに永井自身のメッセージが潜んでいるのだが,序文がそれを切り崩す.事実を客観的に綴ることの重要性とその難しさを感じた.僕もどこかで同じことをやっているに違いない.よかれと思ったことが他人を傷つけ,何の気なしにやったことが喜ばれたりする.この世とはそうして成り立っている.
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