連載 続クロストーク医療裁判・13
相当程度の可能性-再論―拘置所勾留中脳梗塞発症事件―最高裁平成17年12月8日判決の事例から
古谷 真良
1
,
溜箭 将之
2
,
早坂 典洋
3
1東京地方裁判所
2立教大学法学部国際法学科ビジネス法学科
3千葉大学医学部医学研究院脳神経外科
pp.147-153
発行日 2009年2月1日
Published Date 2009/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101387
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本連載は65巻3号~66巻2月号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.今回は,前回の連載第10,11回で取り上げた相当程度の可能性の問題について,その後出された平成17年の最高裁判決を素材に再論する.本件は,東京拘置所に勾留されていた者が脳梗塞を発症し重大な後遺症が残ったことについて,外部の医療機関に適切な時機に転送されていれば,重大な後遺症が残らなかった「相当程度の可能性」があったか否かが問題となった事案である.最高裁は,こうした「相当程度の可能性」があったとは言えないとして,原告の請求を認めなかった高裁の判断を維持したが,判決をした5名の最高裁判事中2名の反対意見が付される一方,多数意見(3名)中の2名がこの反対意見に対する反論的な補足意見を付している.1回目のCT撮影の時点(脳に低吸収域が認められる)やそれ以前に血栓溶解療法の適応があったか否かが重要なポイントとなっている.
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