連載 クロストーク医療裁判・2
医療慣行と医療水準をめぐって―最高裁平成8年1月23日判決の事例から
川嶋 知正
1
,
小島 彩
2
1東京地方裁判所
2東京大学大学院法学政治学研究科
pp.326-329
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100450
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最高裁判所は,「臨床医学の実践における医療水準」が医師の過失の有無の判断基準になるとの判断を示しました(昭和57年3月30日判決)が,この「臨床医学の実践における医療水準」がどのようなものであるのかについては,長く明らかにされないままでした.前回ご紹介した最高裁判所の判決(平成7年6月9日判決)は,医療水準は全国一律に定まるものではなく,医療機関の性格や地域性に応じて個別に判断されることを示しましたが,この判決によっても,医療水準がどのようなものであるかが直ちに導かれるわけではありません.
いったい医師はどのような医療行為をしていれば医療水準に従った注意義務を尽くしたことになるのでしょうか.平均的な医師が現に行っている医療慣行に従った医療行為をしていれば,医療水準に適った医療行為をしたことになるのでしょうか.最高裁判所がこの疑問に対する回答を示したのが,平成8年1月23日にいい渡された本判決です.
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