連載 続クロストーク医療裁判・5
感染症に対する予防と治療―手術後緑膿菌感染症死亡事件―最高裁平成13年6月8日判決の事例から
筈井 卓矢
1
,
土屋 裕子
2
,
鍋谷 圭宏
3
,
落合 武徳
4
1神戸地方・家庭裁判所尼崎支部
2東京大学大学院法学政治学研究科
3千葉大学大学院医学研究院先端応用外科学
4三愛記念そが病院消化器病センター
pp.428-433
発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101188
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本連載は65巻3号~66巻2号に掲載した好評連載の続編である.裁判実務・法律・医療分野に携わる三者が,最高裁判決を事例に論点を解説し,多角的な見方を提供する.
続編の5~7回は「術後管理と医師の過失」を取り上げる.第5回の平成13年判決は,外科手術後の感染防止措置,特に術後の経過から,どの時点で緑膿菌感染の可能性を考えた処置を講ずるべきかが問題となった事案である.術後管理については,手術による侵襲を受けた万全ではない状態の患者に時々刻々と体調の変動がある中で,多種多様な処置を求められる.また,術後管理の扱う科目や事象は多様である.したがって,術後管理における過失論を一般的に定義することは困難であるし,過失の前提となる「医療水準」を明確に措定することにも困難が伴う.5~7回の連載で扱う3件の最高裁判決は,いずれも,そうした点を意識してか,事例に関係する医学的知見を認定し,それを前提として,手術後の一時点における医師のその後の経過に対する予見可能性等を肯定し,過失を肯定する論法をとっている.
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