連載 〈続〉基本からわかる医療経営学・2
病院経営における原価管理
安酸 建二
1
1近畿大学経営学部
pp.434-438
発行日 2008年5月1日
Published Date 2008/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541101189
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近年,病院経営における原価管理の重要性が指摘され始めています.従来の日本の多くの病院は,原価の管理よりも収益の管理(増加)によって経営を維持しようと考えてきました1).しかし,昨今の医療保険制度の改変や病院間の競争激化に伴う病院の収益環境の悪化を念頭に置けば,医業収益の増大を期待するのではなく,原価管理を通じて利益の出る財務体質を構築することが喫緊の課題となっています.医業収益は外部環境の変化に大きく影響を受けますが,原価管理の成果は外部環境の変化にそれほど影響を受けませんので,一定の収益から十分な利益が確保されるように,原価の大きさをコントロールすることに力を注ぐのは経営として自然な展開ともいえます.
しばしば,原価の低減は医療の質の低下につながるという批判を耳にしますが,質の低下につながらないようにどこに原価をかけるかという判断こそ重要です.また,利益の出る財務体質の構築によって,病院が安定的に経営され,医療を継続的に提供していくことも病院に課せられた社会的な使命であるといえます.今回は,原価管理に関する研究を通じて蓄積されてきた知見を紹介しながら,病院経営における原価管理に必要な発想あるいは視点を提供したいと思います.
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