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■急性期医療の原点
新潟市民病院は,ウィリアム・オスラーの医療人としての理念に基づき,「患者とともにある全人的医療」を基本理念に掲げ,また,1)患者さんに信頼されるぬくもりのある医療を目指す,2)重症・専門・救急を中心に質の高い医療を目指す,3)地域医療機関や福祉施設と連携し人々の健康支援を目指す,4)人間性豊かな医療人の育成を目指す,を基本目標としている.
したがって,施設計画もこれらの基本理念や基本目標を踏まえて,21世紀にふさわしい新世代の病院建築の実現を図り,急性期医療のあり方を追求した.「機能的で優しい」病院づくり,すなわち,疾病の治療を目的とする病院本来の機能を優先させながらも,患者・スタッフ双方に使いやすく,暖かみのある病院設計を目指した.低層棟ゾーン・高層棟ゾーン,定時ゾーン・24時間ゾーン,一般ゾーン・スタッフゾーン・クリーンゾーン,などをシンプルな線引きで組み合せ,利用者の種類と範囲を整理し,できるだけコンパクトな動線となるようゾーニングした.これらを最優先することで,迅速で高度な医療の確保,病院を維持するためのセキュリティーの確保およびエネルギーの節約を図った.しかし一方で,シンプルなゾーニングと直線的な動線は,無機質で単一的な空間になりやすいため,それぞれのゾーンに適切なデザインを施し,親しみやすい環境(空間)を整えた.
「患者とともにある全人的医療」の理念には,医療を行う側にとっても,受ける側にとっても,居心地のよい暖かみのある空間が,良好な信頼関係のある医療を考えると不可欠である.無駄のないコンパクトな動線と暖かみのある空間の演出を急性期医療施設の原点として,常に意識して設計を行った.
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