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コーポレートガバナンス
この経済不況下で,営利企業の粉飾決済,会計監査法人の不正,食品の産地や賞味期限の不正表示,脱税などに対して厳しい社会的批判が繰り広げられている.また,政治家や公務員の犯罪,情報の隠蔽や倫理の低下が問題視され続けている.医療の世界では,連日のような医療事故報道と,再び事故を起こさないための医療安全対策が強く要請されている.実際に,組織の内部告発者に対して,いかなる不利益も生じないような法制度が検討されている.さらに,飲酒運転やセクシュアルハラスメントなどに対しても,犯罪として取り扱う方針が明らかになっている.組織の中の一人あるいは複数による不正や重大な過失が,その組織の存続を危うくする時代である.
最近,医療サービスを提供する組織の健全性を確保するために,いわゆる企業統治(コーポレートガバナンス)あるいは病院統治が求められているように思えてならない.教科書的に言えば,組織が目指す方向に向かってリーダーシップを発揮し,スタッフを率先垂範するためには,組織活動の健全性の確保という要素が重要になる.組織をどのような仕組みのもとに統治していくかを検討する場合,経営幹部(意思決定機関,執行機関)は,組織内が使命・目的の達成のために効率的に機能しているかどうかという観点に加え,組織を構成する従業員,取引相手,患者,利用者,顧客,市場,地域社会を分析し,利害関係者(ステークホルダー)の期待にバランスよく応え,組織運営を組み立てていかねばならない.ステークホルダーとの信頼関係の構築には,経営の健全性を示し,社会的信用を得るための経営システムが問われる.したがって,提供する製品やサービスの安全や質あるいは情報公開,組織の倫理や法令などに対する遵法性の確保が重要である.
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